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非営利看護支援活動グループ「ウリボウの会」とは

活動の概要

 看護系大学の教員が,地域の看護職者とも連携して看護独自のプログラムを作成して実践組織「ウリボウの会」を結成し,参加家族と共に,学術・教育および地域で生活するお子様とご家族のための看護支援システムの開発を目指し,実際にお子様やご家族へ支援を提供している会です.一言で言うと,支援する側と支援される側が一緒になって,それぞれの立場から良いケアと良い生活を考え,生み出す会といえます.参加家族の生活力の活性と改善のための看護プログラムPLAI(Program for Life Activation & Improvement)他,実際に看護ツールや看護ケアを提供しながら,新たな看護支援方法の構築を目指しています.

設立のルーツ

 この取り組みは1996年度〜1997年度科学研究費補助金(基盤研究(C))「遊びと面談を糸口とした在宅病障害児とその家族への看護実践モデルの開発」により始めましたが,その発端となったのが,京都教育大学での友久久雄教授が知的障がいをもつお子様を対象として開発した教育介入プログラム「カイネティック・プレイ」(力動遊び)でした.そこで出会ったご家族から地域で生活する障がいをもつお子様の支援に看護需要があることを学んだのです.この障がいをもつお子様とそのご家族との出会いから始まり,「ウリボウの会」の活動は今年で18年目を迎えています.

目的

 本会は,支援する側と支援される側が一緒になって,それぞれの立場から良いケアと良い生活を考え,生み出すことを目的としています.
地域住民とともに地域に役立つケア開発をしているワシントン大学看護学部教授Noel J. Chrisman博士らが提唱するCommunity-Based Participatory Research(CBPR)に近いシステムといえます.

お母さん達の訴え

1)偏見・無理解
「『怪獣!』言うて近所の子に叩かれて,子どもが外へ出られなくなりました.」
2)敬遠・拒否
「ルールがわからず,友達に遊んでもらえません.」
3)行き場のなさ
「どこへ連れていっても,泣き出す,パニックになるで,いつも家で二人でいるしかなく,世界が広がりませんでした.」
4)ニーズの未充足
「単独での関わり(だけしか得られない)で,他の子との関わりは少なく,自由に同年代の子どもと関わったり遊べる場も持てません.」
5)諦め
「普段は諦めてしまい,どうなって欲しいとかあまり考えないですね.うちの子はもう駄目と消極的になってます.」
6)療育ストレス
「(PLAIに)来るまで『お母さんこうしてあげて下さい』ばっかり,『私は誰が癒してくれるん?』て思いがありました.」
7)指示的対応のストレス
「訪問に来てズケズケ言われるとしんどくなります.」
「『〜しないといけません』と言われるとしんど過ぎて….」
8)不安・混乱
「怒らるばっかりで,『何とかして下さい』言われても私かて判らんし.」
9)過剰適応
「この子が生まれてから,ここに来るまで泣けませんでした.」
10)防衛
「他の所ではなかなか自分を出せません.」

参加後のお母さんの感想

1)意欲の開発
「今日はプレイ行く日やな.』て土曜日を楽しみにしてます.学生さんには何でも話せるみたいです.」
「おばちゃんとこ(プレイ)行くよというと自分で出かける用意ができました.」
2)適応性の開発
「ここは最初から嫌がらなかったです.学生さんの手をスーッと取っていました.」
3)社会面の発達
「場が読めるようになり,他の子どもに譲って我慢することも出来るようにもなりました.」
4)運動面の発達
「三輪車もここで覚えて学校で使えるようになりました.」
「バランスが難しい子で,家では乗らないのに,ここでは三輪車に乗ってます.」
5)行動面の発達
「学生さんと遊ぶことで伸びる力が引き出されますね.学生さんをモデルにして伸びてますね.」
6)意欲回復
「子どもの小さな発達変化を認め説明してもらえますし,学生さんが頑張って関わってくりゃはる姿をみてパワーをもらい,落ち込みから立ち直れます.自由に遊ぶ大切さも学びました.」
7)意欲回復:モデル提示・非指示的対応
「ここは,『ああしなさい』『こうしなさい』がないんです.先生や学生さんが子どもに関わったはる姿をみて『しなあかんなあ』『こうしたらええんや』とこっちが勝手に思うんです.」
「ここは『でもね,お母さん』がないんです.」
8)関わる癒し:積極的傾聴・グループ療法
「お母さんや先生とたわいもない話もできるし,専門的な相談もできる.看護が身近になりましたね.」
9)知識の提供と医療連携
「この前も虫刺さされで腫れてて,すぐ対応教えてくりゃはりました.看護婦さんやし,少々熱あっても安心して来れます.」
「専門的なこと聞いても答えてもらえるし,大学の先生がわからん時はちゃんと専門家に聞いて答えてくりゃはります.」
「何かあった時は病院と連携も取ってもらえるし,どうしたら良いかも教えてもらえます.…お医者さんとは視点が違う.それに病院へ行く程でもないことって日々あるんですけど,ここでその時,その時解決が得られるので精神的に楽になりました.」

PLAIのディケアの風景(2002年)

遊び担当の看護師も配備しているが,母親面談担当の看護師も子どもの様子を観察している.子どもには障がいをもつ子どもにもきょうだいにも看護学生が一対一対応で担当して遊び相手を務めている.

写真: PLAIのディケアの風景

「ウリボウの会」青年・成人看護部門の活動の開始

 平成18年度厚生労働科学研究費補助金による医療技術評価総合研究事業「地域で生活する障害児・者の自律生活を支援する看護プログラムの開発——居住型モデルの開発・実践——(16212401)」(代表:三重県立看護大学杉下知子)は滋賀県彦根市にあるグループホームの関係者の皆様のご協力を頂き,実施しました.その内容は,厚生労働省の研究報告に関するホームページでご覧頂けますので,是非,一度ご覧下さい.URLは,http://mhlw-grants.niph.go.jp/index.htmlです(閲覧システムをクリックし,検索語に代表者名「杉下知子」と入力して検索を実行すれば,ご覧になれます).
 この研究を終えた2007年2月からは,研究協力してくれた看護師が中心となり,PLAIを行う小児看護部門と別に青年・成人看護部門を立ち上げ,2部門で活動を始め,グループホームでの滞在型巡回支援の他,作業所で働かれる方やご家族を対象としたディケア・相談・勉強会・夏期宿泊合宿・冬期宿泊合宿も行っています.